眉山を観て

注)眉山をこれから見に行くわ〜という方は、読まない方がいいです。結末が分かっちゃうので。


私の家の近くには大型シネコンがあり、よくそこへ行って映画を観る。一人で観ることもある。

先日、突然映画が観たくなって松嶋菜々子主演の「眉山」を見た。映画館に入ると私一人・・・。

よっしゃ〜!これは思いっきり泣けるぞ!と思っていたが、映画が始まってすぐに2人の女性が入ってきた。

映画を観ながら「あー、あたしなんでこの映画選んじゃったんだろう。私と母のためにあるような映画じゃない・・・」などと私にぴったり過ぎる映画を選んだ自分が可笑しくなった。

そういえば映画を良く観る母はいつも自分が観た映画の論評をするのに、「眉山」に関しては一言「よかったよ」だけだったなと気づく。

それだけ心にずしっと来たのかもと母のことを思いながら映画を観てしまった。映画に出てくる主人公の母(宮本信子)の言葉は私の母の言葉と重なり、父親(夏八木勲)の言葉は私の父の生前の言葉と重なった。

「ずっと健康でいて、お母さんを助けてあげて下さい」という言葉、私も父親に言われたことがある。

今は亡き父親のことを思いながら、そして私を一生懸命育ててくれた母親のことを思いながら涙が止まらなくなってしまった。私はその昔、母のことが嫌いだった。私を思い通りに動かし、なんでもかんでも余計なことをやってしてしまう母に正直腹が立っていたときもあった。

でも、今は分かるんだ。どんな思いで私を育てていたかが。それは眉山のストーリーとも重なって、私の中に流れてくる。私も成長したんだなぁなんて実感する。

映画の中で主人公の母が病気で亡くなったあとに自分の体を病院に献体として提供するの。

そのとき死体解剖をする医学部生に残したメッセージにはこう書いてあった。たった一言だけ。

「娘、河野咲子は私の命です」

きっと私の母もそう思っているに違いないよなぁと思ったら、涙が止まらなくなってしまった。

人のことを干渉しすぎる母だが、彼女なりの愛し方だったのだろうと今はそれも愛しく思える自分がいる。

映画を見た後母のことをしばらく考えた。元気にしてるかなぁ、がんばってるかなぁって。